水の女
飛騨高山へ骨董探しに妻と二人で旅行をした時、心残りだったのが「古い町並み」近くで歴史を感じさせる銭湯(たぶん「梅の湯」さん?)を発見したのに入れなかったことだ。
大阪では、ほぼ絶滅種に近い古式豊かな(笑)銭湯も旅先ではまだいくつか見つけることが出来る。
設備自体に多少のリニューアルがあるものの、金沢は「ひがし茶屋街」入り口近くにある「東湯」さん等に入った時など、茶屋町の歴史そのものを感じて心躍ったものだ。
温泉も銭湯もそれぞれの土地のコミュニティの一部であり、しかもそれは文字通り「裸の接触」で、言葉という粉飾さえないレベルの空間である。
それ故、温泉や銭湯が好きと言えばあまりに理屈が立ちすぎるだろうか?
そんなezou、今回、「@nifty温泉」にクチコミ・プロフィール登録させて貰いました。
で今日は気持ちの赴くままの「銭湯映画」のご紹介。
銭湯映画ってこの一本だけだろうか、、面白い分野だと思うんだけど、アニメじゃクレシンで「温泉わくわく大決戦」ってのもあるなぁ。温泉好き風呂好きの私からすれば「水の女」はお宝ものの映画です。
・・・って違うか。このままこのレビューを鵜呑みにして読まれたら「水の女」を本当に「銭湯」をテーマにした映画だと思いこんでしまう人がでそうなので訂正しときますが、「水の女」は日本映画が小津監督の昔から得意とする私小説映画の佳作です。
人生の大切な日には必ず雨が降るという雨女・涼(UA)。しかも家業が銭湯という念の入りよう。それに涼はどうやら雨女以上に運が悪い女でもあるらしい。ある雨の日、涼は父と婚約者を同時に亡くしてしまう。そして傷心旅行に出た涼が、実家の銭湯に帰って来るとそこには謎の男・優作(浅野忠信)が住み着いていたという展開。
映画はボイラーマンとして雇い入れた勇作の正体が判明するころからサスペンスラブストーリー風に雰囲気が変わっていくんですが、それまではやっぱり一風変わった「銭湯映画」なんですね、これが(笑)。
銭湯甚句のフルコーラスが流れるワンシーン見たってどうやらそれは間違いない。巨乳のおばちゃんが、お乳を持ち上げてその下を洗うシーンだとか、泡だらけの背中にざばぁーとお湯をかけるとその下からド派手なもんもんが現れたり、懐かしい光景が続きます。
第一、舞台の中心になる銭湯そのものがいいと言うか、拘りすぎですねこの映画は。高い煙突としっかりした瓦屋根を持つ家屋、木材を燃料にする釜場、歴史そのものの脱衣場に古めかしい体重計や扇風機。
正方形のタイルが一面に敷き詰められた浴場、当然、壁には富士山のペンキ絵。まさに絵に描いたような「昔の銭湯」、いったい何処で探し出してきたんでしょうねこんな銭湯。
さらに涼と、涼が傷心旅行先の富士山の樹海であったユキノと再開した時の会話が風呂好きマインドのハァトを擽ります。
「アンタ、風呂屋やったんか……」
「うん」
「ええ仕事やなぁ」
「そうか?」
「何も生み出さへんし、何も残さへん。ただ、人の垢落とすだけ。全部流され、捨てられる。ゼロや!そやのに毎日人に喜ばれる。感謝される。スゴイことやん、サイコーやん!」
・・とまた本筋からそれてしまうので正調レビュー路線で「水の女」を語ると、冒頭でもちらりと書きましたが、この映画、久しぶりの「純日本映画」です。
ハリウッド路線を巧みに取り入れた韓国映画の興隆ぶりは既成事実ですが、その韓国映画がどうしても真似が出来ない「分野」が「私小説映画」ですね。
何処かワビサビ・スピリッツを感じさせる凝ったカメラワークに些細な心理描写がわざとらしく淡々と進む感じ、、日本映画の独壇場でしょ。「水の女」にも随所にそれが現れる。
湖面の波、排水の渦、木の葉を散らす雨、「火の男」優作の存在が大きくならない限り画面は徹底した青のトーンで統一されます。
拘りまくりの映像美ですね。それに粋としか言いようがない場面転換。CMディレクター出身の杉森秀則氏の特質と言えばそれまでだけれど、これはまさしく日本人感覚。
残念なのは、ある程度のドラマ性が打ち出されてくる終盤近くの展開と前半の持ち味があまり巧くかみ合っていないこと。
自分の家に無断で入り込んでいた不審男を、なんとなく野良猫を飼うみたいな感じで世話をして、その内、深い仲になってしまう涼という「水の女」に対して、「実は俺、自分の中に狂気をため込んでんだ」みたいな「火の男」が俗っぽ過ぎるというのかな、、まあそんな感じです。ハイ。
PS この映画、ちょこっと出てくる人々が異様に面白いです。涼の銭湯にやって来て、優作の指名手配写真を貼っていく人の良いお巡りさんの江夏豊。はじめ誰かと思いましたね。
それと優作が浜辺でであうボンチのオサムちゃんね。見事にシュールです。UAは、、、他のレビューじゃ結構、結構ポイント高いのですが私は「、、、」でしたね。大阪弁とあのだるいハスキーボイスがあったから救われてるけど。
出演: 浅野忠信, UA, YUKI, 江夏豊, 大浦龍宇一
監督: 杉森秀則
時間: 115 分
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