彦根築城400年祭
永源寺にある古民家に週1の割合で大阪から通うようになって一番お世話になっているのが307号線だ。
平均して片道2時間と少しのドライブなのだが、日野あたりで野猿の群が畑を荒らしているのを目撃したり、裏白トンネル(滋賀県甲賀市)を超えた場所で、大型野生鹿の死体を発見したりと結構、自然の生態系と接触する場面がある。
特に道路に横たわる野生鹿の死体を見たときにはかなり驚いた。子馬程の大きさと重量感のある生き物の躯が灰色のアスファルトの上に横たわっている様は、車に挽き潰された狸や鼬などとは違って、ある種の尊厳を感じさせるものだ。
山間のこのカーブを通過したのが午前8時過ぎだから、日の出前後の早朝か、深夜に山から下りてきた鹿が車と接触したのだろう。
当てた方の車も、さぞ驚いた事だろう。第一、成人男性に近い体重の鹿に接触したのだから相当な衝撃があったはずで(バンパーぐらいは当然凹んでいるだろう)、何よりも精神的なショックを受けたことだろうと思う。
日本では捕鯨問題に絡むとどんなリベラルなマスコミでも「どうして鯨だけを保護するんだ、命を大切にするというなら鰯だって」みたいな幼児返りをする部分があるのだけれど、「大きい温血動物」には何か特別のものがあるのは確かだ。
それは理屈ではなくて肌で感じるものだ。その「大きい温血動物」を轢き殺してしまったのだ・・・鹿の死体は、そのまま放置してあったのだから「ひき逃げ」ということになるのだが。このドライバーはその後、数日間はかなりきつかったのではないかと思う。
永源寺の古民家では庭に置いてある手水石でキンギョソウが薄紫の花を咲かせていた。
防火用水井戸に数株、投げ込んで置いたモノが一夏で増殖しまくり処理に困り、試しにと1・2株移したものだった。
話には聞いていたがその増殖振りに驚くと共に、キンギョソウに花が咲くというのは嬉しい誤算だった。
キンギョソウの花は蓮のそれのように一日の内で開き方の様相を変えないで慎ましげに、しかもしっかり咲いている感じがいい。
そんな永源寺では盆を過ぎたあたりから、急に朝晩が涼しくなり体が楽だ。それも手伝って朝から妻と彦根に古布を探しに出かけることにした。
城下町彦根は、いま築城400年祭を開催中だそうだ。400年と言えば、七世代前後の人生のリレーがあり、人の稚拙さを思えば長く可能性と比べれば短いその年月が、この地に文化を育んで来たわけである。
子どもの頃には、単純に「人は歴史の推移と共に進化する」と思いこんでいた幸せな時期があったのだけれど、大人になると100年前であろうが400年前であろうが、いつの時代にも人間関係のゴタゴタはあったろうし、人それぞれの心の大きさも又、大小様々であったろうと思うようになる。
いやむしろ、心の強さや豊潤さで言うと、科学や技術の進歩と反比例してどんどん劣化しつつあるのではないかと、、。
話が逸れた。
この彦根城築城400年祭と同時に「彦根まちなか博物館」がオープンしたようだ。
彦根に散在する文化的コレクションを町中のスペースを利用して展示するという市民事業だそうだ。
ezouが拝見させてもらったのはオープン企画の4つのテーマ「日下部鳴鶴」「近江鉄道」「引札」「高橋狗佛」コレクションの内、「引札」と「高橋狗佛」。
高橋狗佛コレクションは彦根の観光人気スポットである京橋キャッスルロードの「夢京橋あかり館」の2階・展示ギャラリーにある。
ギャラリーと言っても「まちなか博物館」というネーミング通りに、こじんまりした規模で、それが返って展示物の内容と相まってなかなか可愛らしく仕上がっている。
高橋狗佛コレクションは、彦根藩主井伊家の教育役だった高橋敬吉氏が収集した「いぬ」の郷土玩具の数々で構成されている。
元来、彦根市立図書館に寄贈され保管されていたコレクションを今回初めてお披露目したものだとか。
全国各地に伝えられて来た犬の郷土玩具約200点という事であるから、特別に「彦根だからこそ・彦根由縁の」というものではない。
同時に展示してある現在のチラシ広告にあたる多色刷りの木版の「引札」コレクションも同じ様な位置づけなのだが、この二つ妙に「彦根まちなか博物館」というコンセプトに馴染んでいる。
「文化」は人々の生活の中で育まれるもので、個人が多大の金を出して作り上げるものではないし,ましてや一個人に所属するものでもない。
実に当たり前の事なのだが、今という時代は意外とその辺りの認識が混濁しているのではないかと最近よく思う。「彦根まちなか博物館」が新鮮に感じられる由縁である。
この日の昼食は、彦根城のお堀沿い(彦根市立花町)にあるブランジュリ&パティスリーカフェのポム・ダムールでとった。
フランス人パティシエを迎えて、本場パリの焼き菓子とパンを売りにしているようだが、確かに、その味は他のものとは一線を画している。
特に中がしっとりねっちっとした食感のあるバゲットに妻は感動していた。
有機野菜をつかった日替わりランチの味は、ezouのような中高年男性の舌には少しインパクトが欠けるが、回りは殆ど、カップル・女性客・お子さま連れで、この客層なら受けがいいだろうと思った。
何より全面をガラスにした壁から眺める夏の日差しに輝く彦根城のお堀の緑が、この店のオシャレ度とマッチして楽しい時を過ごさせてくれる。
昼下がりには彦根城のすぐ隣、護国神社の境内にあるカフェ「朴」で、文字通りお茶を飲んだのだが、ここはポム・ダムールと同じく「彦根」そのものを借景にしているのだが、そのコンセプトはまったく正反対、その話はまたいずれ。
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夏もそろそろお終い。
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