近江の国の再発見1 桜旅
時に心が酔いしれる程の満開の桜を見たいと思う事があって「桜の名所」を目指して旅をするのだが、その為に取った休暇と、一番見頃な桜の開花時期が必ずしも一致するものではない。
今年の春は、総てが裏目に出て、名所に訪れた時期が総じて早すぎた。そんな外れ旅行の締めくくりが、滋賀は三井寺の夜桜だった。
三井寺の夜桜を鑑賞する為だけに、琵琶湖湖畔の高層ホテルに予約を取っての一泊旅行だったのだが、見事に三分咲きの様相。
けれどその代わり「近江の国」の再発見になったのがこの旅だった。
ホテルの部屋からは琵琶湖が一望できるのだが、やはり琵琶湖は大きい、、ほぼ海の感覚である。
この頃、NHK大河ドラマ「功名が辻」では、信長が浅井長政を自害に追いやった後日談ぐらいまで話が進んでいて、当時の勢力地図を考えると、琵琶湖はその周辺の土地に「豊かさ」と「強さ」を与え続けて来たのだと気付かされる。「僧の比叡山」も「公家の京都」も地勢として、琵琶湖に育まれているのだ。
その京都と琵琶湖南端を結ぶ疎水の根っこの側にある三井寺が、この桜旅の最大ポイントだった。
琵琶湖疎水とは、明治時代に琵琶湖の水を京都へ運ぶために造られた水路であり、山科から蹴上、南禅寺の水路閣へとつながって行き、水道や発電などに利用された。
この疏水沿いには桜の名スポットが多い。しかし都市部では春も終わりかけようという時期に、こちらでは桜がまだ蕾が少し開きかけた程度。
とりあえず寂しさの募る夜の桜木を眺めながら、疎水沿いに北上して三井寺に移動した。山頂に続く階段の足下には灯籠が仕掛けてあって、なかなかいい雰囲気なのだがやはりここでも、桜は三部咲きだった。
翌日も桜を求めて琵琶湖の東岸を北上する。最初に立ち寄ったのが、これも又「功名が辻」で再びスポットが当たり初めている近江八幡。
近江八幡のイメージは「水郷」である。川を観光船で回る水郷巡りは有名だろう。川面にしなだり落ちる桜も見てみたかったのだが、彦根に桜を見に行くまでのコーヒータイムとして近江八幡の日牟禮ビレッジに焦点を合わせていたのでそれは諦めた。
まずは「かわらミュージアム」の駐車場に車を止めて同施設を見学。屋根瓦は戦国時代の武将達が着る鎧のように、色々なパーツが組み合わされているもので、それぞれに名称があったり、形状も微妙に違っていて、それ自体が一つの体系を持つ世界だという事がよく判った。
さらに、この「かわらミュージアム」の非常口からは八幡堀の終点(?)に出ることが出来るので、これは便利だった。
八幡堀脇の水際遊歩道を歩いて日牟禮八幡宮の入り口にある橋に上がり、日牟禮ビレッジに到着する、、これはなかなかに効率的なコースではないだろうか。
八幡宮のロープウェイを奥に見ながら回りを見渡すと、神社の境内の中とはとても思えない赤煉瓦のお洒落な建物のクラブ・ハリエ日牟禮館がある。
ドアを開けた途端に甘い香り、目の前にはケーキ工房と売場が展開されていて、目的のカフェはこれらの奥から入る事が出来る。
すこし雑然とした印象のある庭とオープンテラスも魅力的だったが、外気が少し寒そうだったので屋内のテーブル席へ。椅子とかテーブルがしっかりたものが誂えてあるので相当にくつろげる。
妻はここのメインである焼きたてのバームクーヘンと、期間限定の桜紅茶のセット、私は「ヌガーグラッセと温かいフレンチトーストの組み合わせ」を注文する。
味は申し分ない。特に柔らかくてスポンジケーキみたいなバームクーヘンの食感は今まで食べてきたバームクーヘンのイメージを覆される。
ここを出てから立ち寄ったのがクラブ・ハリエの真向かいにある町家造りの「日牟禮の舎」、通称・たねや。
実を言うとクラブハリエの本家はこの和菓子のお店たねやである。たねやを核にして、洋菓子をメインに据えた日牟禮ビレッジが形成されているのだ。
このたねや、和菓子自体の味は、各地の老舗のそれを特別に上回るものではないのだけれど、従業員さんの気合いと言うか接客の心構えが凄い。
よく訓練されていると言うのか、マクドの接客が完成されたマニュアルなら、ここの接客はまさに「近江商人の心」、、それを体験する為だけでも買い物をする値打ちがあるように思えた。
妻はこの日、偶然にも4月8日限定販売の花まつり・五泉(五色のねりきりをこしあんで包み薯蕷生地で巻き上げたもの)が買えて非常に喜んでいた。
お昼前に近江八幡を後にして、彦根城へ。途中、観光客でごった返す水郷巡りの発着場を発見して、今度はたねやのぜんざいと水郷桜を必ず体験するぞと心に誓う。
湖岸道路は、結構ニューカマーのお洒落なレストランやらがちらほらと発見出来て、琵琶湖東岸の今後の可能性を少し感じた。
辿り着いた彦根城の桜はやはり予想通り、大半がつぼみのまま、その代わり城内の梅林が満開という状況だった。 これは琵琶湖を北上しているのだから仕方のない事で、この頃には自分の気持ちの中でも、花見から彦根城中濠にかかる京橋から南へ伸びる夢京橋キャッスルロードに観光の主眼が移っていた。
キャッスルロードを訪れたのはこの日が初めてで、すべての建物が、切妻屋根と白壁、格子戸などモノトーンに統一され江戸時代の町屋風店舗が軒を並べている姿に、気合いの入った町興しパワーを感じることが出来て、好感が持てた。
かなり遅くなった昼食は、このキャッスルロードにある「あゆの店きむら」で、干し鮎でだしをとったあゆ雑炊と鮎の塩焼をいただいた。見てくれに反して骨張ったところなど微塵もなくとても美味しい。
これも又、琵琶湖の恵みなのである。
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